
「ままだの じゃがまいた」 栃木県 小山市 間々田
むかしむかし、栃木の小山にある「ままだ」っちゅう村に、でっかい沼があったんさ。
その沼にはな、毎年、春さしかかるころになると、でっけぇ大蛇が出てきては村ん中を荒らしていくんだと。
「今年もきっと、あのヤロが出てくんべなぁ」
「おっかねーなぁ!田んぼやられっと困んべや」
村人たちは、顔色悪くしながらそう言って、沼に近づかねようにしてたんさ。
大蛇っちゅうのはな、田畑をズシャズシャ踏みつぶして、牛も馬もさらってく。
運がわりぃと、人間まで・・・村人は何年も、ずーっとその恐怖に耐えてきたんだんべ。
んでな、ある年のこと。
旅の修験者(しゅげんじゃ)っちゅう、ふしぎな坊さんみてぇな人が村さやってきたんさ。
「おらぁ、見てらんねぇ。どうしてもこの村、助けてぇと思ってな」
そう言って、夜な夜な沼のほとりで、おっきな声で呪文を唱えはじめたんさ。
「じゃがまいた!じゃがまいた!」
太鼓をドンドコ鳴らして、鈴しゃんしゃん鳴らして、村人が見たこともねぇ不思議な踊りまで始めたんさ。
「なにしてんだべ、あの人?」
「やめときな、おっかねーんだから!」
でもな、その夜、ほんとに大蛇が出てきたんだわ。
バリバリバリ!って雷が鳴って、空が真っ黒になったかと思ったら、沼からズズズーッと、あの化け物みてぇな大蛇が現れたんさ。
「グワォォォ!!誰じゃ、わしを起こすんはぁ!!」
とぐろ巻いて、ギラギラした目で修験者をにらみつけたそのときも、修験者はまったく動じねぇで、ニタッと笑って言ったんさ。
「じゃがまいた、じゃがまいた!」
なんべも、なんべも、くり返し言ううちに、大蛇の動きがゆっくりになって、ついにはゴロンと寝っ転がっちまったんだわ。
「こりゃあ、呪文が効いたんだっぺな!」
村人たちは隠れて見てて、そう叫んだんさ。
修験者は、懐からシュルッと縄を取り出して、大蛇の首さ巻きつけた。
ほんなら不思議なことに、大蛇はスゥ〜ッと姿を消して、代わりに一本の古い木がその場に残ったんさ。
修験者はこう言った。
「この “じゃがまいた” っちゅう言葉には、悪さを封じる力があんだ。忘れんようにな」
そっからだ、村では毎年春になると、子どもたちが縄を持って「じゃがまいた、じゃがまいた!」っちゅうて太鼓鳴らしながら町を練り歩くようになったんさ。
これが今に続く「ままだの蛇まつり」の始まりだって、地元じゃ語り継がれてるんだわ。
おしまい。
